a16z：2026年に期待される17の新しい暗号分野

PANews

2025-12-12 10:23:16

編集：Sonal Chokshi、a16z

翻訳：Tim、PANews

安定コイン、RWA、決済と金融

より良く、よりスマートな安定コイン入出金チャネル

昨年、安定コインの取引量は推定46兆ドルに達し、史上最高を更新し続けている。具体的には、これは決済プラットフォームPayPalの取引量の20倍以上に相当し、世界最大級の決済ネットワークの一つVisaの取引量にほぼ3倍に近く、米国のACH（自動引落し処理ネットワーク）の取引規模にも急速に迫っている（ACHは直接預金などの金融取引を処理する電子ネットワーク）。

現在、安定コインの送金は1秒以内に完了し、コストは1セント未満だ。しかし、未解決の課題は、これらの暗号通貨と人々の日常的に使われる金融インフラをどう接続するかだ。言い換えれば、安定コインと従来通貨の交換チャネルを構築することだ。

次世代のスタートアップ企業はこのギャップを埋めつつある。彼らは安定コインと主流の決済システムや現地通貨を結びつけている。一部の企業は暗号認証技術を使い、現地の口座残高とデジタルドルの交換を可能にしている。別の企業は地域の決済ネットワークに接続し、QRコードやリアルタイム支払いシステムを利用した銀行間送金を実現している。さらに、グローバルな相互運用性を持つデジタルウォレット層やカード発行プラットフォームを構築し、ユーザーが日常の商店で安定コインで支払えるようにしている。これらの革新はデジタルドル経済の参加範囲を広げ、安定コインが主流の決済手段となる加速を期待されている。

これらの入出金チャネルが成熟するにつれて、デジタルドルは現地の決済システムや商用ツールに直接接続され、新たな行動パターンが生まれるだろう。労働者はリアルタイムで海外送金を受け取り、商店は銀行口座不要でグローバル流通のデジタルドルを受け取り、決済アプリは世界中のユーザーと価値を即座に決済できる。安定コインは根本的に、エッジ金融ツールからインターネットの基盤的決済層へと変貌を遂げる。

——Jeremy Zhang、a16z cryptoエンジニアリングチーム

より密にネイティブな方法でRWAと安定コインを理解する

我々は、銀行、フィンテック企業、アセットマネジメント企業が米国株、大宗商品、指数などの伝統資産のブロックチェーン上への取り込みに強い関心を示していることを観察している。より多くの伝統資産がオンチェーン化されるにつれて、そのトークン化は形式的なものにとどまり、現実世界資産の理念にとどまっているケースが多く、暗号ネイティブの特性を十分に活用できていない。

しかし、永続契約のような合成性の高い金融商品は、より深い流動性を提供し、実現も容易だ。永続契約は理解しやすいレバレッジメカニズムも備えており、最も市場適合性の高い暗号ネイティブの派生商品だと私は信じている。同時に、新興市場の株式は永続契約化に最も適した資産の一つだと考えている。（特定の株式のゼロ日オプション市場の流動性は、しばしば現物市場を上回ることもあり、永続契約の実験例として非常に魅力的だ。）

結局のところ、これは「永続契約化とトークン化」の選択問題だ。しかし、今後1年で、より多くの暗号ネイティブなRWA資産のトークン化を見ることになるだろう。

同様の思考に沿えば、2026年までに、多くの安定コインは単なるトークン化ではなく、「ネイティブ発行」が増加するだろう。2025年には安定コインが主流となり、発行済みの安定コインの数は増え続けている。

しかし、信用基盤が十分でない安定コインは、狭義の銀行のように見える。これらは超安全資産とみなされる流動性資産を保持しているが、長期的には、チェーン上経済の支柱にはならないと私は考える。

最近、多くの新しい資産運用者、キュレーター、プロトコルが登場し、チェーン外資産を担保にして、オンチェーンで資産支援型ローンを提供し始めている。これらのローンは、通常チェーン外で発行され、その後トークン化される。私は、このトークン化にはほとんどメリットがなく、既にチェーン上にあるユーザーに配分されることを除いてはほとんど意味がないと考えている。だからこそ、債務資産はチェーン上で発行すべきであり、チェーン外で発行してからトークン化すべきではない。チェーン上発行は、ローン管理コストやバックエンド構造のコストを削減し、アクセス性を高めるからだ。課題となるのは、規制と標準化だが、構築者たちはすでにこれらを解決する努力をしている。

——Guy Wuollet、a16z cryptoジェネラルパートナー

安定コインは銀行帳簿のアップグレードサイクルと新しい決済シナリオを切り開く

銀行のソフトウェアシステムは、現代の開発者にとって馴染みが薄いことが多い。1960〜70年代、銀行業は大規模ソフトウェアシステムの先駆者だった。80〜90年代に第2世代のコアバンクシステム（例えばTemenosのGLOBUSやInfoSysのFinacle）が登場した。しかし、これらのソフトは老朽化し、更新も遅い。そのため、資金預かりや担保、その他の債務を記録する重要なコア帳簿システムは、今もなおメインフレーム上で動作し、COBOL言語でプログラミングされており、バッチ処理のインターフェースを通じて操作されている。

世界のほとんどの資産は、これらの数十年にわたるコア帳簿に依存している。これらのシステムは長年にわたり信頼され、規制当局からも高く評価され、複雑な銀行業務シナリオに深く統合されているが、同時に革新を妨げている。リアルタイム決済などの重要な機能追加には、数ヶ月、あるいは数年を要し、技術的負債や規制の複雑さを克服しなければならない。

これが安定コインの意義だ。過去数年は、安定コインがプロダクトと市場の適合点を見出し、主流に浸透した時期だった。今年、伝統的金融機関はこれらをかつてないほど積極的に受け入れている。安定コインやトークン化された預金、国債、オンチェーン債券は、銀行やフィンテック企業、金融機関が新たな商品を開発し、新規顧客にサービスを提供できる道を開いている。さらに重要なのは、これらが、古くて長年安定的に稼働してきた伝統的システムを書き換える必要なく、イノベーションを促進できる点だ。したがって、安定コインは金融機関のイノベーションを促す新たな道筋となる。

——Sam Broner

インターネットバンキング化

AIエージェントが大規模に登場し、多くの商業活動がバックエンドで自動化され、ユーザーのクリックを必要としなくなると、貨幣から価値への流れ方も変わる。

意図に基づき、逐次命令ではなくAIエージェントがニーズを認識し、義務を履行し、結果をトリガーすれば、資金を動かし、価値は今日の情報伝達と同じく高速かつ自由に流れる必要がある。ここにブロックチェーン、スマートコントラクト、オンチェーンプロトコルの役割がある。

スマートコントラクトは既に、数秒以内にグローバルな米ドルの決済を完了できる。しかし2026年には、x402のような新しいプリミティブにより、決済はプログラム可能かつ応答性のあるものとなる：エージェント間で請求書や照合、バッチ処理を行う必要なく、データやGPU計算能力、API呼び出しの即時ノンリクエスト決済が可能だ。開発者がリリースするソフトウェアアップデートには、内蔵の支払いルール、上限、監査追跡が含まれ、法定通貨や商店の入店は不要となる。イベントの進行に伴う予測市場のリアルタイム自己清算、オッズの動的更新、エージェントの自由な取引、秒単位でのグローバル決済も、仲介機関や取引所の関与なしに実現できる。

価値のこのような流れを可能にすれば、「支払いフロー」は単なる操作層ではなく、ネットワークの行動に昇華する：銀行はインターネットの基盤インフラとなり、資産は基盤的インフラとなる。貨幣がインターネット上のルーティング可能な情報パケットに変われば、インターネットは金融システムの支柱だけでなく、金融システムそのものになる。

——Christian CrowleyとPyrs Carvolth、a16z crypto GTMチーム

資産運用の大衆化

従来、パーソナライズされた資産運用サービスは、ハイネットワーズの銀行顧客だけの専売特許だった。カスタムアドバイスを提供し、異なる資産クラスで個別の投資ポートフォリオを実現するには高コストかつ操作も複雑だ。しかし、多くの資産クラスがトークン化されることで、暗号通道とAIの推奨、協調システムの個別戦略を組み合わせ、即時かつ低コストで実行・リバランスできるようになった。

これは単なるロボアドバイザーの範疇にとどまらず、誰もがアクティブな投資ポートフォリオ管理にアクセスできる時代になった。2025年には、伝統的金融機関が暗号通貨（直接投資またはETPを通じて）のエクスポージャーを増やしたが、これは始まりに過ぎない。2026年には、「資産増加」を目的としたプラットフォームが登場し、「資産価値の保存」だけではなくなる。金融テクノロジー企業（RevolutやRobinhoodなど）や集中型取引所（Coinbaseなど）が技術力を生かし、市場シェアを拡大している。

同時に、Morpho VaultsのようなDeFiツールは、資産を自動的に最適なリスク調整後リターンの借入市場に配置し、投資ポートフォリオのコアとなる収益資産の配置を可能にしている。余剰流動性残高を安定コインで保持し、伝統的な貨幣市場ファンドではなくRWA貨幣市場ファンドに投資することで、さらに収益性を高められる。

最後に、個人投資家は今や、プライベートクレジット、未上場企業、プライベートエクイティといった流動性の低いプライベートマーケット資産に投資しやすくなった。トークン化はこれらの市場の潜在力を解き放ちつつ、規制や報告義務も満たす。ポートフォリオのバランスをとるさまざまな資産がトークン化されれば（債券、株式、プライベート投資、オルタナティブ投資まで）、資金移動の手続き不要で自動的にリバランスできる。

——Maggie Hsu、a16z crypto GTMチーム

AIとエージェント

「顧客を知る」（KYC）から「エージェントを知る」（KYA）へ

スマートエージェント経済の制約は、次第に知能の高さから身元認証へと変化している。

金融サービス業界では、「非人間の身元」の数は人間従業員の96倍以上に達しているが、これらは未だにアカウントを持たないゴーストだ。ここで鍵となるのはKYA：エージェントを知ることだ。

人間が信用スコアを得てローンを借りるのと同様に、AIエージェントも暗号署名で証明された権限証明を必要とする。これにより、エージェントとその認可主体、操作制限、責任の所在とが結びつく。この仕組みが整うまでは、商取引は防火壁の層でエージェントを遮断し続けるだろう。数十年かけて構築されたKYCインフラは、今や数ヶ月でKYAの課題解決を迫られている。

——Sean Neville、Circle共同創設者、USDCアーキテクト、現Catena Labs CEO

私たちはAIを使って研究を完結させる

私は数理経済学者として、今年1月には汎用人工知能モデルに私のワークフローを理解させるのは難しかった。しかし、11月には、博士課程の学生に指示するように抽象的な指示をAIに出せるようになり、時には新規かつ正確な答えも得られるようになった。個人的な経験以外にも、AIはより広範な研究分野で応用され始めている。特に推論分野では、現在のモデルは科学発見を直接サポートするだけでなく、Putnam数学コンテストの問題を自主的に解答可能になっている（これは世界の大学レベルで最も難しい数学試験の一つかもしれない）。

こうした研究支援ツールがどの分野に最大の恩恵をもたらすか、またどのように役立つかは、未解決の課題だ。しかし、私は人工知能研究は、新しいタイプの博学な研究モデルを生み出し、推測や連想を得意とし、より推論的な答えから素早く導き出す能力を重視する新たな研究アプローチを促進・報奨するだろうと予測している。これらの答えは必ずしも正確ではないかもしれないが、正しい方向性を指し示すこともある（少なくともあるトポロジカルな枠組みでは）。皮肉なことに、これはモデルの幻覚を操る力に似ている：モデルが十分に「賢く」なると、発散的な思考の抽象空間を与えると無意味な内容を生むこともあるが、時には画期的な発見をもたらす。これは、人間が非線形かつ非明示的な思考の中で最も創造性を爆発させるのに似ている。

この種の推論を行うには、新しいAIワークフローが必要だ。それは、単一のエージェント間のやり取りだけでなく、エージェントのネスト構造を持つマルチレベルのモデルを活用し、研究者が早期のモデルのアイデアや方針を評価し、真偽を精査し、最終的に価値のある内容を抽出する仕組みだ。私はこの方法を使って論文を書き、他者はこれを使った特許調査や新しい芸術形式の創作、または（残念ながら）新しいスマートコントラクト攻撃の発見もしている。

しかし、そのようなエージェントのネストを運用する研究システムには、モデル間の優れた相互運用性と、それぞれのモデルの寄与を識別し合理的に補償する仕組みが必要だ。これこそ、暗号技術が解決を支援できる二つの重要なポイントだ。

——Scott Kominers、a16z暗号研究チーム、ハーバードビジネススクール教授

見えざる税：オープンネットワークへの新たな負担

人工知能エージェントの台頭は、オープンネットワークに見えざる税を課し、その経済基盤を根底から覆そうとしている。この破壊は、インターネットの文脈層と実行層の間の乖離から生じている。現状、AIエージェントは広告依存のウェブサイト（文脈層）からデータを抽出し、ユーザーへの便利さを提供する一方、コンテンツ創出の収益源（広告やサブスクリプション）を体系的に回避している。

オープンネットワークの侵食と、多様なコンテンツ創出を促進するAIの発展を守るには、大規模な技術的・経済的解決策の導入が必要だ。それは、新世代のスポンサーシップ、帰属システム、あるいは新たな資金供給モデルを含むかもしれない。既存のAI認証プロトコルは、その場しのぎの対症療法に過ぎず、多くはAIによるトラフィック侵食によるコンテンツ制作者の収入喪失の一部を補償するだけにとどまる。

ネットワークには、価値が自動的に流動する新たな経済モデルが必要だ。今後1年の重要な変化は、静的な許諾から動的かつ使用量に基づく補償へと移行することだ。これには、ブロックチェーンを用いたナノレベルの決済や精密なトレーサビリティ標準を活用し、情報提供者に報酬を自動付与する仕組みの試験と普及が求められる。

——Liz Harkavy、a16z crypto投資チーム

プライバシーとセキュリティ

プライバシーは暗号分野の最重要な防御線になる

プライバシーは、世界の金融のオンチェーン運用にとって不可欠な要件だが、これは現行のほぼ全てのブロックチェーンに欠如している特徴だ。多くのブロックチェーンにとって、プライバシー機能は事後的に追加検討される補助的なものにとどまる。

しかし今や、プライバシー性そのものが、ひとつのブロックチェーンを他と区別する要素になりつつある。さらに、プライバシーはより重要な役割も担う。それは、オンチェーンにロックされる効果を生むことであり、「プライベートネットワーク効果」と呼べるものだ。特に、現状の性能だけでは競争に勝ち残れない世界では、これが重要だ。

ブリッジングプロトコルを使えば、情報がすべて公開されていれば、異なるブロックチェーン間の資産移動は容易だ。しかし、秘密情報が関わると話は別だ。トークンのブリッジは簡単だが、秘密のブリッジは非常に難しい。プライベートエリアに入る／出る時、監視されたブロックチェーンやメモリプール、ネットワークトラフィックにより、身元を特定されるリスクが常に存在する。プライベートとパブリックの境界をまたぐと、取引時間や規模の相関といったメタデータが漏洩し、追跡が容易になる。

多くの類似した新たなチェーン（競争の激化によりコストがゼロに近づき、ブロックスペースの本質的な差異がなくなる見込み）よりも、プライバシーを持つブロックチェーンの方が、より強いネットワーク効果を形成しやすい。実際、もしある「汎用型」パブリックチェーンが、エコシステムの発展やキラーアプリ、分散性において他と差別化できなければ、ユーザーや開発者はその使用や構築の理由をほとんど持たない。忠誠心も生まれにくい。

パブリックチェーンを使うと、他のチェーンのユーザーと簡単に取引できるため、どのチェーンを使うかは重要ではなくなる。一方、プライベートチェーンを使うと、どのチェーンを選ぶかは非常に重要になる。なぜなら、一度参加すれば移動は難しくなり、プライバシーが露出するリスクも伴う。そうした事情は、勝者総取りの状態を生む。プライバシー保護は現実の多くのシナリオにとって不可欠であり、少数のプライバシー重視チェーンが市場を支配する可能性が高い。

——Ali Yahya、a16z crypto普通合伙人

未来のメッセージ伝達は量子耐性だけでなく、非中央集権も必要

量子時代に向けた準備が進む中、多くの暗号通信アプリ（AppleのiMessage、Signal、WhatsAppなど）が先行してきた。しかし問題は、これらの主流通信アプリが、私たちが信頼する単一の組織運営のプライベートサーバに依存している点だ。これらサーバは、政府による閉鎖やバックドアの埋め込み、プライベートデータの強制提出のターゲットになりやすい。

もし一国が個人のサーバを停止させたり、企業がプライベートサーバの鍵を所有したり、企業がプライベートサーバを持つなら、量子暗号の意味はほとんどなくなる。プライベートサーバは「私を信頼してください」と求めるが、サーバがないと「あなたは私を信頼しなくていい」。通信に第三者の仲介は不要だ。情報伝達はオープンなプロトコルにより行われるべきであり、誰も信頼しなくてよい。

この実現手法は、ネットワークの非中央集権化だ。私有サーバも不要で、特定アプリに依存せず、すべてオープンソースのコードを使い、最先端の暗号技術──量子耐性も含む──を導入することだ。オープンなネットワークでは、個人・企業・非営利組織・国家いかんに関わらず、私たちの通信能力を奪うことはできない。たとえ特定の国や企業がアプリを閉鎖しても、翌日には数百の新バージョンが登場する。ノードが閉鎖されても、ブロックチェーンなどの経済的インセンティブにより、新たなノードが即座に代替する。

人々が秘密鍵を持ち、自分の情報を所有できるとしたら、すべてが変わる。アプリは存続させることもできるが、最終的には、自分の情報とアイデンティティを完全にコントロールできる。エンドユーザーは、自分の情報を真に所有し、アプリを持たない場合でも、自分の情報を管理できる。

これは単なる量子耐性や暗号技術の問題ではなく、所有権と非中央集権の問題だ。どちらか一方だけでは、不正なシステムに過ぎない。

——Shane Mac、XMTP Labs共同創設者兼CEO

プライバシー・アズ・ア・サービス（Privacy-as-a-Service）

各モデル、エージェント、自動化プロセスの背後には、シンプルな要素：データがある。しかし今日、多くのデータパイプラインは、その入力も出力も不透明で、変動しやすく、監査も困難だ。これは一部の消費者向けアプリや許可型システムには適合するが、多くの業界やユーザー（例：金融・医療）にとっては、敏感なデータのプライバシーを保護しなければならない。同時に、これは、多くの機関がRWAのトークン化に取り組む上での主要な障壁でもある。

では、私たちはどうやってプライバシーを守りつつ、安全・法令遵守・自己主導・グローバル連携のイノベーションを促進できるのか。多くの解決策があるが、私は特に「データアクセス制御」に注目したい：誰が敏感データをコントロールし、どう流通させ、誰（または何）がアクセスできるのか。

データアクセス制御機能がなければ、データの機密性を確保したい利用者は、今のところ中央集権的サービスやカスタムシステムに頼るしかない。これは時間とコストがかかり、従来の金融機関などがオンチェーンのデータ管理の利点を十分に活用できなくなる。AIエージェントシステムが自主的にブラウズ、取引、意思決定を始める中、業界横断のユーザーや機関も、単なる「努力を尽くす信頼モデル」ではなく、暗号認証の仕組みを必要とする。

だからこそ、「プライバシー・アズ・ア・サービス」が必要だと私は信じている：この新技術は、プログラム可能なネイティブのデータアクセスルール、クライアント側の暗号化、非中央集権的鍵管理を提供し、誰がいつ・どの条件で何のデータを復号できるかを正確に制御し、そのすべてをチェーン上で実行できる。検証可能なデータシステムと組み合わせることで、データプライバシーはインターネットの基礎的公共インフラの中核へと昇格し、事後的なアプリ層の修復ではなく、真の基盤となる。

——Adeniyi Abiodun、Mysten Labs共同創設者兼最高製品責任者

"コードは法律"から"ルールは法"へ

ここ最近、実戦で証明された多くのDeFiプロトコルがハッカー攻撃を受けた。これらのプロジェクトは、強力なチームや厳格な監査、長年の安定運用経験を持つが、それでも現状の深刻さを示している。安全基準は依然として個別の事例と経験に頼る部分が大きい。

成熟を目指すには、DeFiのセキュリティは、欠陥のあるパターンから設計のレイヤーへと移行すべきだ。原則的なアプローチとすることだ。

静的展開、展開前の段階（テスト、監査、形式的検証）では、全体の不変条件を検証し、部分的な検証だけではなく、グローバルな不変性を保証すべきだ。現在、多くのチームが開発中のAI支援証明ツールは、技術的仕様を作成し、不変性の仮説を提示し、過去のコスト高を招いた手動証明を大きく削減できる。

動的・展開後の段階（運用時監視・実行）では、これらの不変条件を動的なガードレールに変換し、最後の防衛線として、各取引が満たすべきランタイムアサーションとしてエンコードする。

こうすれば、すべての脆弱性を発見できると仮定しなくてもよくなる。コードに安全性の重要な属性を強制し、それに違反した取引は自動的に巻き戻される。

これは理論だけでなく、実践でも多くの攻撃がこれらの安全検知をトリガーし、攻撃を阻止している。したがって、「コードは法律」から、「ルールは法律」へと変化している。新たな攻撃手法も、安全性の属性を満たす限り、システムの完全性維持に寄与するため、攻撃はほとんど無意味か、実行困難となる。

——Daejun Park、a16z cryptoエンジニアリングチーム

その他の分野と応用

予測市場はより大きく、より広く、より賢くなる

予測市場はすでに主流になりつつある。来年は、暗号通貨やAIと融合し、より大きく、より広く、より賢くなるだろうが、その一方で、新たな課題も浮上している。

まず、より多くのコントラクトが上場される。これは、主要な選挙や地政学的イベントのリアルタイムオッズだけでなく、マイナーな結果や複合交差イベントのオッズも取得できることを意味する。これらの新コントラクトが出現し、より多くの情報をもたらし、ニュースエコシステムの一部となる（これはすでに現実化している）。それにより、重要な社会的議題が浮上し、これらの情報の価値や、より透明で監査可能な設計、そして暗号通貨が実現できる可能性について議論が高まる。

これらの合約の飛躍的拡大に対応し、新たな合意形成方式による正当性検証が必要だ。中央集権的プラットフォームの裁定（例：特定イベントの成立・不成立、確認方法）は重要だが、ゼレンスキー訴訟やベネズエラ大統領選などの紛争事例は、その限界を露呈している。こうした端境期の事例を解決し、予測市場をより実用的な応用領域に拡大するには、分散型ガバナンスや大規模言語モデルを活用した予言者機械（オラクル）が、紛争の結果において事実を判定する助けとなる。

AIの予測能力はすでに驚くべき水準に達している。例えば、これらのプラットフォームを動かすAIエージェントは、世界中の取引信号をスキャンし、短期の取引優位性を得る。これにより、認知世界の新次元を発見し、未来の予測能力を高めることにつながる。これらのエージェントは、高度な政治分析者としても機能し、戦略を研究しながら、複雑な社会的予測要因を明らかにできる。

予測市場は世論調査に取って代われるのか？そうではない。むしろ、世論調査をより良いものにし（調査結果は予測市場にも反映できる）、それによって政治の意思決定を支援できる。私の関心は、予測市場と豊かで活気ある世論調査のエコシステムが、AIや暗号通貨といった新技術の助けでどのように協調できるかだ。調査対象者がロボットではなく実在人物であることを証明する新手法も必要だ。

——Andy Hall、a16z crypto研究アドバイザー、スタンフォード大学政治経済学教授