9億6,300万ドルを投じて1万枚超のビットコインを追加購入、Strategyの「無限弾丸」モデルは今後も持続可能か?

執筆:Glendon,Techub News

暗号資産市場が低迷している中、昨日、Strategyは先週約9.63億ドルで10,624BTCを購入したことを再度開示し、平均取得価格は約90,615ドルとなった。

Strategyが米SECに提出したForm 8-K書類によると、2025年12月7日時点で、Strategyは合計660,624BTCを保有しており、累計コストは約493.5億ドル、平均コストは74,696ドル/BTCとなっている。ビットコインの年初来(YTD 2025)リターンは24.7%に達している。この購入資金は、同社がATMファイナンスでSTRDおよびMSTR株式を売却して得たものだ。

この大規模な追加購入は、Strategyが採用する「無限弾薬」型の資金調達モデルが完全には制約を受けていないことを示している。

以前、Strategyは今月初めに14.4億ドルの現金準備金を確保し、優先株の配当と既存債務の利息支払いに充てると発表していた。この決定は市場やビットコイン投資家の間で議論を呼んだ。多くの人が、Strategyがビットコイン価格下落時に「買い増し」を選ばず現金を確保したことが、かつて同社が掲げていた長期積立の理念とかけ離れていると考えている。

このような疑念が渦巻く中、Strategyの今回の大規模なビットコイン追加購入は、無言ながらも力強い回答と見ることができる。同時に、今回の買い増しの裏には、単に一貫した長期買い戦略の継続なのか、それとも暗号資産市場の短期的な上昇を見越した積極的なシグナルなのか、という問題も隠れている。

さらに注目すべきは、今回の買い増しが市場の信頼を一定程度回復させたものの、Strategyが直面する多くの困難が完全に解決されたわけではない点だ。この状況下で、今後Strategyはどのように発展していくのだろうか。

Strategy 信用喪失の背後にある多重困難

市場が次第にStrategyに対する信頼を失っている理由は多岐にわたり、特にビットコインの買い増しペースの鈍化、株価下落、資金調達の制限などが大きな要因となっている。

12月8日時点で、Strategyは今年累計21万BTC以上、合計214,224BTCを買い増している。この数字だけ見るとまずまずだが、詳細に調べると、Strategyによるビットコイン購入の減速が明らかだ。

CryptoQuantの観測によると、2025年のStrategyのビットコイン購入量は大幅に減少し、月間購入量は2024年のピーク時13.4万BTCから2025年11月には9,100BTCまで急減した。特に8月以降、Strategyの買い増しの勢いが著しく衰えている。以前はビットコイン価格が高騰し、コストやリスクの観点から買い増しを控えるのも理解できた。しかし、ビットコイン価格が下落し、市場がStrategyの「底値買い」を期待していたにもかかわらず、暗号資産業界最大のDAT企業であるStrategyが買い増しペースを緩めたことは、同社の市場に対する信頼不足を如実に示している。これは他のDAT企業や機関投資家のセンチメントにも直接影響を与え、ビットコインの上昇を阻み、さらなる下落圧力をもたらしかねない。

なぜ最近Strategyはビットコインの「底値買い」をしなかったのか。その大きな理由は株価や資金調達状況の変化にある。

現時点での株価はStrategy(MSTR)183.69ドルで、今年の高値約457ドルから約60%下落している。

株価の下落は、Strategyの資金調達力を直撃する。Strategyは2024年10月末、「21/21 Plan」と題したファイナンス計画を発表し、今後3年間で420億ドルの新たな資本を調達しビットコイン購入に充てる予定だった。

よく知られているように、Strategyが今年前半に絶え間なくビットコインを買い増せたのは、ATM株式ファイナンス計画があったからだ。この計画の中核は、Strategyの株価が保有ビットコイン価値に対してプレミアムを持つ場合、株式発行によって資金調達し、その資金でビットコインを買い増すというものだ。

ここで重要なのがStrategyの純資産価値比率(mNAV、企業時価総額と保有ビットコイン価値の比率)だ。かつてStrategyのmNAVは2.5倍以上に達し、市場が「株式発行によるビットコイン購入」戦略に大きなプレミアムを与えていた。しかし、株価と市場リスク選好の低下に伴い、この比率も下がり続けている。mNAVが1を下回ると、ATM計画による資金調達が困難になる。

12月8日時点で、Strategyの時価総額は約527.84億ドル、純mNAVは約1.07。1以上を維持しているが、11月には何度か1を割り込んでいる。TD Cowenのレポートによれば、Strategyのプレミアムは昨年末ピーク時から大きく減少し、2021年末から2022年初頭の水準に近づいている。

同時に、市場はStrategy株の将来パフォーマンスについても見方を変えつつある。投資銀行Cantor Fitzgeraldのアナリストは、Strategy株の12か月目標株価を229ドルとし、従来の560ドルから約59%下方修正した。CantorはMSTRに「増持」評価を維持したものの、アナリストはStrategyが今後1年で資本市場から調達できる資金が、従来予想の225億ドルから78億ドルに縮小すると見ている。

また、JPモルガンは、StrategyがmNAVを1以上維持し、ビットコインの売却を避けられるかどうかが、ビットコインの価格動向にとって重要な要素だと見ている。この見方の背後には、Strategyによるビットコイン保有の集中化と、それに伴うビットコイン売却リスクが市場で注目されているという事情がある。現時点で、Strategyはビットコイン総供給量の約3.14%を保有しており、もし大量売却すれば連鎖反応を引き起こし、市場崩壊につながる可能性もある。

とはいえ、このリスクを過度に懸念する必要はない。StrategyのCEO、Phong Leは「What Bitcoin Did」番組で、mNAVが1を下回り、資金調達が困難になった場合にのみビットコイン売却を検討すると明言しており、これを「最後の手段」としている。彼は、これは長期的な方針転換や自主的売却計画ではなく、極端な市場・資本環境悪化時にのみ取る「財務判断」だと強調した。

また、ATMファイナンスによる1万枚超のビットコイン追加購入は、Strategyがまだ「行き詰まった」段階にないことを明確に示している。

その他にも、世界の証券指数プロバイダーMSCIは、バランスシートに占めるデジタル資産比率が50%を超える企業を主要指数から除外するルールを検討しており、Strategy(MSTR)も該当する。この件は業界で大きな話題となり、JPモルガンは、MSTRがMSCI USAやナスダック100など主力指数から除外されれば、最大28億ドルの資金流出が起こり、パッシブファンドの売却で影響がさらに拡大する可能性があると指摘している。

MSCIは1月15日に決定を下す見込みで、他の指数プロバイダーも追随すれば、関連資金流出は最大88億ドルにのぼる可能性がある。ロイターによれば、StrategyはMSCIと協議を進めており、「MSCI指数からの除外」への対応にあたっている。

「バランス」を模索する長期ビットコイン買い増し戦略

こうした困難の中、まず明確なのは、Strategyがビットコインに対し非常に強い信念を持っていることだ。Phong Leは、少なくとも2065年までビットコインを保有し、長期的な積み上げ戦略を継続すると明言している。

StrategyはSNSで、ビットコインが平均取得価格の7.4万ドルまで下落しても、BTC資産は転換社債の5.9倍であると発信した。創業者のMichael Saylorもイベントで、「現在約600億ドルのビットコイン備蓄と約80億ドルの負債があり、レバレッジ比率はかなり低い」と強調した。

次に配当支払い面では、Phong LeはStrategyが年間約8億ドルの配当支払い義務を抱えていると具体的に指摘。最近発行された優先株の償還が進むにつれ、年間支払い義務は7.5億~8億ドルに近づいている。彼は、mNAVを上回る株価で調達した資本を優先的に配当に充てる計画だ。そのため、Strategyは14.4億ドルの現金準備金を設け、株式やビットコインデリバティブ、ビットコインそのものの売却ではなく、配当支払いを目的としている。

この現金準備金は、市場発行計画に基づきAクラス普通株の売却収益で確保された。Strategyは少なくとも12か月分の配当支払い需要をカバーする準備金規模を維持する計画で、最終的には24か月以上をカバーするバッファファンドを目指している。この過程で600億ドルのビットコインポジションに手をつけることはない。

これは堅実な防御戦略であり、リスク回避の有効な手段だ。この戦略が市場で物議を醸しているものの、Strategyはすでに「目をつぶって買い続ける」段階を脱している。現状の市場環境下では、ビットコインが大幅下落したからといって盲目的に「底値買い」する戦略はもはや適切ではない。Strategyの株価下落はビットコイン下落と連動しているだけでなく、ビットコインETF市場のインパクトも背景にある。米国の政策開放や市場競争の激化により、かつてビットコインの重要な代替手段だったStrategy株は、今や機関投資家がビットコインエクスポージャーを求める際の第一選択肢ではなくなっている。

このため、Strategyは長期的なビットコイン買い増しと会社の正常運営の間で、最適なバランスを見出す新たな戦略を模索する必要がある。

現段階で、Strategyは資産の有効活用を高める方法を模索しているようだ。Phong Leは、財務の柔軟性を高めるためにビットコインの貸出しも検討していると発言している。Michael Saylorは各国政府にビットコインを基盤としたデジタルバンキングシステムの開発を積極的に働きかけており、高利回り・低ボラティリティの口座で数兆ドル規模の預金を惹きつけることを目指している。

さらに、Strategyはビットコインカストディに関するリスク低減にも取り組んでいる。Arkhamによると、Coinbaseへの依存度を下げるため、カストディプロバイダーの分散を進めており、12月6日時点で約183,900BTC(保有量の約28%)をフィデリティ・カストディ(Fidelity Custody)に移管した。

注目すべきは、Strategyに対する疑念や懸念の声が絶えないものの、市場全体としては同社に楽観的な見方も根強い点だ。前述の「MSCIによるMSTR除外リスク」についても、BitwiseのCIO Matt Houganは歴史的な経験から、指数への採用・除外が株価へ及ぼす影響は投資家の懸念ほど顕著ではないと指摘している。Strategyは昨年ナスダック100指数に採用され、パッシブ資金による約21億ドルの買いがあったものの、「株価はほとんど動かなかった」。直近の株価下落も、除外リスクの先取りであり、長期的には大きな変動はないとの見方だ。

JPモルガンも同様の見解で、StrategyのMSCI除外リスクはすでに市場に織り込まれており、株価は主要株価指数からの除外影響を反映済みとみている。さらに、MSCIの今後の決定を上昇のきっかけとみなし、除外で一部資金流出が起きても、ポジティブな決定があればStrategy株やビットコイン価格は強力な上昇力を得られる可能性があると指摘している。

加えて、ウォール街の証券会社BenchmarkもStrategyの支払い能力に自信を示し、同社の負債はコントロール可能な範囲にあり、企業構造は批判者が主張するほど脆弱ではないとした。Strategyの生存能力への懸念は、ビットコイン下落時に必ず出る雑音に過ぎないと述べている。

Strategyが先週10,624BTCの追加購入を公表する前は、これらの見解は市場の信頼を高めるための言葉として受け取られていたかもしれない。しかし、ビットコインが来年初めに新たな上昇サイクルに入るという市場の予測通り、Strategyの最新の追加購入は、ビットコインへの信頼をさらに強化し、「ビットコイン価格は大幅下落しない」との姿勢を示し、ビットコインの長期的価値への強いコミットメントを体現している。市場が回復し、資金が再流入すれば、Strategyはより有利な戦略的ポジションに立てるだろう。

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