見解：ETHはかつて通貨だったが、今はステーブルコインに取って代わられた

執筆：Dankrad Feist、イーサリアム財団元研究員、Tempo現研究員

翻訳：金色財経

私はトレーダーではありません。本記事はあくまで私個人の見解のまとめであり、投資助言を目的とするものではありません。

現在、L1トークンの評価には興味深い現象が起きています。オンチェーン活動が継続的に増加しているにもかかわらず、多くのトークンが以前の価格水準を維持できずにいます。この乖離は、これらのトークンの基礎的な価値提案が既に変化している可能性を示しています。以下に現状に対する私の見解を述べます。

ETHはかつて通貨だった

ETHが通貨に該当するかどうかについては多くの議論がありましたが、事実を振り返れば、現実としてETHはかつて通貨として機能していました。

2017年、イーサリアムパブリックチェーンの最初の大きなプロダクト・マーケット・フィット（PMF）はICOでした。あの年は狂乱の年で、楽観ムードに溢れていましたが、最も重要なのはICO調達がETHで行われたことです。当時、ETHは値上がりし続けているように見えたため、個人も機関もほとんどの投資をETHで保有し、それを資産準備価値の主要な尺度としていました。

2020/2021年にはDeFiやNFTを中心とした新たな導入の波が訪れました。ETHは再び中核となりました——クリスティーズ（Christie’s）やサザビーズ（Sotheby’s）がETH建てで価格表示を始めたのを覚えていますか？

振り返ると、あれがETHが通貨として最も採用されたピークの時期でした。ある意味では、「通貨の三要素」を実現していました：

記帳単位（主にNFT向け）

価値の保存

交換手段

貨幣流通速度の方程式（MV = PQ、ここでMは貨幣供給量、Vは流通速度、Pは価格水準、Qは財・サービスの総量）によれば、ETHが通貨として使われる場合、その時価総額（Mに比例）はオンチェーンGDP（PQ）に比例するはずです（流通速度Vが比較的一定であると仮定）。つまり、イーサリアムの経済活動が増加する中で、ETHが引き続き主要な交換手段として使われていれば、その評価も伸び続けるはずでした。

ETHはステーブルコインに取って代わられた

2021年以降、ETHにとっては厳しい時期が続いています：NFTは大きく価値を失い、交換手段としての地位も多くがステーブルコインに取って代わられました。

2017-2021年と比べて、現在イーサリアムは交換手段や記帳単位として使われることはほとんどありません。これが、採用は伸びているにもかかわらず、ETHの価格上昇が停滞している理由の説明になるかもしれません。

今後の道筋

ETHがこの状況を打開するには、以下のような道があります：

ゴールド（そして現在のビットコイン）を模倣した「ミーム的価値保存」の方向へ転換する。しかし、これはイーサリアムチェーン自体の成功とは大きく切り離され、さらにビットコインより優れていると認識されるかは不透明です。ミーム的価値保存の価値は主にブランドによって左右され、技術的属性ではありません。

大規模な利用を促進し、かつて失った分野でETHの通貨機能を再確立する。

収益獲得と手数料バーンに注力し、少なくとも数十億ドル規模の収益を目指す。これにはイーサリアム財団（EF）を効率的な研究開発（R&D）および事業開発（BD）組織へと転換し、これらの取り組みを持続的に資金調達する方法を探る必要があります。

多くのL1も同じ問題に直面します。彼らのトークンは通貨としての歴史はありませんが、評価の多くはイーサリアムの潜在的な代替品とみなされてきたこと、そしてそのトークンもまた交換手段として使われるであろうという暗黙の前提に基づいています。Solanaは2025年初頭のミームコインブームで一時的に成功しましたが、その成功はイーサリアムのこれまでの原動力よりさらに短命でした。

結論

L1トークンが直面している課題は、過去の高い評価が主に通貨（特に交換手段）としての用途に依存していたことにあります。貨幣流通速度方程式は、トークンがこの機能を果たす時、その評価がオンチェーン経済活動に追随することを示しています。しかし、ステーブルコインへの移行によって、ほとんどのL1トークンはこうした関係を失いました。

ここに評価の問題が生じます：もしトークンがもはや通貨として使われないのであれば、何がその価値を牽引するのでしょうか？選択肢は三つしかありません：再び通貨機能を取り戻すか、価値保存のストーリー（ビットコインとの競争）に転換するか、あるいは手数料収入とバーンによって実質的な収益を生み出し、根本的に価値提案を変えるかです。後者には、単なるプロトコル開発だけでなく、事業開発と持続的な収益創出に注力する、これまでとは異なるタイプの組織が必要です。