## 先週(7月21日週)の動き:NY金、JPX金ともに週初の上げ幅を失って終了、貿易協議を巡る不透明感の後退先週(7月21日の週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は週足で2週続落となった。週前半にトランプ政権によるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の解任観測を手掛かりとしたファンドの買いに、約1ヶ月半ぶりの高値となる3,450ドル超まで買われたものの、週末にかけ上げ幅を失うことになった。7月22日に合意が伝えられた日米関税協議について、23日にトランプ米大統領が内容を発表。これをひな形にすることで欧州連合(EU)との貿易交渉が進展するとの期待から、リスクオンセントメントの高まりを象徴する株高の一方で、安全資産として買われていたNY金は週末にかけ見切り売りが続くことになった。7月25日の終値は前週末比37.90ドル(0.68%)安の3,335.60ドルで続落した。### FRBの独立性を巡る圧力 ファンドの買い攻勢先週の当欄見出しをあえて「FOMCを前に高まるトランプ政権の利下げ圧力」としたが、中央銀行の政策決定会合前でFRB高官が発言を自粛(ブラックアウト)する中で、トランプ米大統領や政権幹部による利下げ要求や議長解任観測が取沙汰されることになった。現在進行中のFRB本部の改修工事を巡る予算の拡大を手掛かりに議長解任観測が高まった。前週末から3営業日続伸で7月22日の終値は3,443.70ドルと終値ベースの過去最高値(3,452.80ドル、6月13日)に接近していた。なお6月13日はイスラエルがイラン空爆に着手した日でもある。いわば地政学リスクに関連するイベントを背景に切り上げた水準だが、先週前半の上昇はFRBの独立性(米ドルの信認)を懸念したマクロ型の上昇と言えた。### マクロ型ファンドのロング急増週末7月25日にCFTC(米商品先物取引委員会)が発表した7月22日時点でのデータでは、NYコメックスにおけるファンドのロング(買い建て)ポジションは、全体で前週比(重量換算)129.16トン増加のネット762.91トンとなっていた。その内、中期的観点でポジションを組んでいるマクロ型ファンドの買い越しは前週比44.52トン増の231.45トンと、最高値を付けた4月中旬以来、約3ヶ月半ぶりの高水準となった。### 貿易協議を不透明感の後退 安全資産売りただし、こうしたマクロ型の材料を手掛かりとした上昇も、日米協議の合意をきっかけに欧州連合(EU)との貿易交渉が進展するとの期待が高まり不透明感が後退、S&P総合500種とナスダック総合指数が過去最高値を更新する中で安全資産とされる金は売られ、結局NY金は週前半の上げ幅を失うことになった。レンジは3,325.50~3,451.70ドルで上下の値幅は126.20ドルと前週の75.00ドルから拡大した。### 国内金価格は前半に過去最高値更新一方、先週の国内価格は、週初の戻り高値追いの後、週末にかけ失速したNY金の動きを反映しつつ、円高の動きが加わり値動きは大きくなった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は海の日の3連休明けの7月22日、23日と連日で過去最高値を更新した。7月23日の取引時間中の高値1万6326円及び終値 1万6306円はともに過去最高値となった。ただし、翌7月24日には週初の147円台から一時145円台まで円高が進んだこともあり、前日比296円安と大きく下幅を失うことになった。7月25日の終値は1万6005円でJPX金の週足は前週末比85円(0.52%)安の反落となった。レンジは1万5958~1万6326円で値幅は368円と大きくなった。## 今週(7月28日週)の動き:7月29~30日FOMC、8月1日(金)の7月雇用統計、コアPCEデフレーターに注目 NY金3,300~3,400ドル、JPX金1万5900~1万6300円を想定早くも今週から8月に入るが、月末と月初が重なり重要指標の発表が多いうえにFOMC開催と、注目指標・イベント盛りだくさんの週となる。### 利下げ見送りのFOMC 反対票の動向に注目まず7月29~30日開催のFOMCだが、米経済指標が堅調に推移していることで政策金利の変更はないとみられる。7月24日にトランプ米大統領はFRB本部訪問(改修中の工事現場を視察)という異例の行動に出たが、その際にも利下げすべきだとの持論を繰り返した。ただし、パウエル議長の解任に関して「必要はない」と語ったことで、一定の緊張緩和につながった。今回のFOMCに関しては、ウォラーおよびボウマンの2名の理事が事前に今会合での利下げを支持する発言を行っていることから、金利据え置きに反対票を投じる可能性がある。7月15日にはリッチモンド地区連銀のバーキン総裁が、「FOMCは必ずしも議長の方針に従う必要はない」との見解を示したことも気になるところだ。バーキン総裁は2025年のFOMCでは投票権を保有していないが、仮に反対票が多い場合、過去には議長が辞任ということも起きている。今回のFOMCは利下げなしが織り込まれているが、反対票が出るのか否か、出るとするとその数に注目となる。さらに終了後のパウエル議長の記者会見では、今後の政策方針とともに自身の進退に関連した記者の質問にどう答えるかが注目される。### 8月1日(金)の7月雇用統計、コアPCEデフレーター、7月29日(火)の6月雇用動態調査(JOLTS)に注目 ハイテク大手の企業決算7月29日(火)の6月雇用動態調査(JOLTS)では求人件数を、7月30日(水)の米4-6月期GDP速報値では個人消費と設備投資に注目したい。8月1日(金)の7月雇用統計は利下げ支持のFRB理事が雇用の鈍化を懸念する発言をしていることもあり注目度は高い。非農業部門雇用者数の伸びは10万人程度にとどまり、過去8ヶ月で最も低い伸びとなる見込みが示されている。失業率も4.2%に上昇すると予想されている。企業が採用に関する慎重姿勢を強めていることが浮き彫りになる見通し。6月の求人件数も減少が見込まれている。さらに8月1日にはFRBが重視する6月のコア個人消費支出(PCE)価格指数(コアPCEデフレーター)が発表される。前月比で加速が見込まれており、関税の影響が消費者に徐々に波及している可能性を見ることになる。さらにハイテク大手の決算にも注目の必要がある。こうした中でNY金については3,300~3,400ドル、JPX金については1万5900~1万6300円を想定している。
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先週(7月21日週)の動き:NY金、JPX金ともに週初の上げ幅を失って終了、貿易協議を巡る不透明感の後退
先週(7月21日の週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は週足で2週続落となった。週前半にトランプ政権によるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の解任観測を手掛かりとしたファンドの買いに、約1ヶ月半ぶりの高値となる3,450ドル超まで買われたものの、週末にかけ上げ幅を失うことになった。
7月22日に合意が伝えられた日米関税協議について、23日にトランプ米大統領が内容を発表。これをひな形にすることで欧州連合(EU)との貿易交渉が進展するとの期待から、リスクオンセントメントの高まりを象徴する株高の一方で、安全資産として買われていたNY金は週末にかけ見切り売りが続くことになった。7月25日の終値は前週末比37.90ドル(0.68%)安の3,335.60ドルで続落した。
FRBの独立性を巡る圧力 ファンドの買い攻勢
先週の当欄見出しをあえて「FOMCを前に高まるトランプ政権の利下げ圧力」としたが、中央銀行の政策決定会合前でFRB高官が発言を自粛(ブラックアウト)する中で、トランプ米大統領や政権幹部による利下げ要求や議長解任観測が取沙汰されることになった。現在進行中のFRB本部の改修工事を巡る予算の拡大を手掛かりに議長解任観測が高まった。
前週末から3営業日続伸で7月22日の終値は3,443.70ドルと終値ベースの過去最高値(3,452.80ドル、6月13日)に接近していた。なお6月13日はイスラエルがイラン空爆に着手した日でもある。いわば地政学リスクに関連するイベントを背景に切り上げた水準だが、先週前半の上昇はFRBの独立性(米ドルの信認)を懸念したマクロ型の上昇と言えた。
マクロ型ファンドのロング急増
週末7月25日にCFTC(米商品先物取引委員会)が発表した7月22日時点でのデータでは、NYコメックスにおけるファンドのロング(買い建て)ポジションは、全体で前週比(重量換算)129.16トン増加のネット762.91トンとなっていた。その内、中期的観点でポジションを組んでいるマクロ型ファンドの買い越しは前週比44.52トン増の231.45トンと、最高値を付けた4月中旬以来、約3ヶ月半ぶりの高水準となった。
貿易協議を不透明感の後退 安全資産売り
ただし、こうしたマクロ型の材料を手掛かりとした上昇も、日米協議の合意をきっかけに欧州連合(EU)との貿易交渉が進展するとの期待が高まり不透明感が後退、S&P総合500種とナスダック総合指数が過去最高値を更新する中で安全資産とされる金は売られ、結局NY金は週前半の上げ幅を失うことになった。レンジは3,325.50~3,451.70ドルで上下の値幅は126.20ドルと前週の75.00ドルから拡大した。
国内金価格は前半に過去最高値更新
一方、先週の国内価格は、週初の戻り高値追いの後、週末にかけ失速したNY金の動きを反映しつつ、円高の動きが加わり値動きは大きくなった。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)は海の日の3連休明けの7月22日、23日と連日で過去最高値を更新した。7月23日の取引時間中の高値1万6326円及び終値 1万6306円はともに過去最高値となった。ただし、翌7月24日には週初の147円台から一時145円台まで円高が進んだこともあり、前日比296円安と大きく下幅を失うことになった。
7月25日の終値は1万6005円でJPX金の週足は前週末比85円(0.52%)安の反落となった。レンジは1万5958~1万6326円で値幅は368円と大きくなった。
今週(7月28日週)の動き:7月29~30日FOMC、8月1日(金)の7月雇用統計、コアPCEデフレーターに注目 NY金3,300~3,400ドル、JPX金1万5900~1万6300円を想定
早くも今週から8月に入るが、月末と月初が重なり重要指標の発表が多いうえにFOMC開催と、注目指標・イベント盛りだくさんの週となる。
利下げ見送りのFOMC 反対票の動向に注目
まず7月29~30日開催のFOMCだが、米経済指標が堅調に推移していることで政策金利の変更はないとみられる。7月24日にトランプ米大統領はFRB本部訪問(改修中の工事現場を視察)という異例の行動に出たが、その際にも利下げすべきだとの持論を繰り返した。ただし、パウエル議長の解任に関して「必要はない」と語ったことで、一定の緊張緩和につながった。
今回のFOMCに関しては、ウォラーおよびボウマンの2名の理事が事前に今会合での利下げを支持する発言を行っていることから、金利据え置きに反対票を投じる可能性がある。7月15日にはリッチモンド地区連銀のバーキン総裁が、「FOMCは必ずしも議長の方針に従う必要はない」との見解を示したことも気になるところだ。バーキン総裁は2025年のFOMCでは投票権を保有していないが、仮に反対票が多い場合、過去には議長が辞任ということも起きている。
今回のFOMCは利下げなしが織り込まれているが、反対票が出るのか否か、出るとするとその数に注目となる。さらに終了後のパウエル議長の記者会見では、今後の政策方針とともに自身の進退に関連した記者の質問にどう答えるかが注目される。
8月1日(金)の7月雇用統計、コアPCEデフレーター、7月29日(火)の6月雇用動態調査(JOLTS)に注目 ハイテク大手の企業決算
7月29日(火)の6月雇用動態調査(JOLTS)では求人件数を、7月30日(水)の米4-6月期GDP速報値では個人消費と設備投資に注目したい。
8月1日(金)の7月雇用統計は利下げ支持のFRB理事が雇用の鈍化を懸念する発言をしていることもあり注目度は高い。非農業部門雇用者数の伸びは10万人程度にとどまり、過去8ヶ月で最も低い伸びとなる見込みが示されている。失業率も4.2%に上昇すると予想されている。企業が採用に関する慎重姿勢を強めていることが浮き彫りになる見通し。6月の求人件数も減少が見込まれている。
さらに8月1日にはFRBが重視する6月のコア個人消費支出(PCE)価格指数(コアPCEデフレーター)が発表される。前月比で加速が見込まれており、関税の影響が消費者に徐々に波及している可能性を見ることになる。
さらにハイテク大手の決算にも注目の必要がある。
こうした中でNY金については3,300~3,400ドル、JPX金については1万5900~1万6300円を想定している。